2014年5月15日16時30分
■どぶろく、交流に酔う
東慶祐(ひがしけいすけ)さん(57歳)・久美さん(52歳)
「昨年の今日に泊まった」と一文を添えたメールがお客さんから届き、「今年は5月の連休過ぎに伺いたい」とあった。東慶祐さん、久美さん夫妻の表情が思わずほころんだ。
夫妻は、高知県三原村で農業をしながら、農家民宿「くろうさぎ」を営む。昨年は約300人が投宿した。リピーターも多く、開業から2年足らずの間に4度訪れた人もいた。遍路道が近く、お遍路さんの利用が多い。にがり農法で手塩にかけたコシヒカリで造ったどぶろく「こぼれ雪」や、慶祐さんが釣ってきた魚、久美さん自慢の手料理をふるまう。
村は2004年にどぶろく特区となり、7軒がどぶろくを造る。夫妻は「農閑期の収入源になる」と加わった。実は2人ともお酒を飲まない。「酒造りなんて無理」と慶祐さんは最初反対したが、「自慢のお米に付加価値が付く」と説く久美さんに根負け。お酒が出せる店などがないと酒造免許がおりないので、07年に納屋を改装して農家喫茶を始め、免許を取った。
店に立ち寄るお遍路さんとの交流は楽しい。「泊まってもらえば、もっとおしゃべりできる」と考え、12年に民宿を開業した。村の商工会の勧めで日本政策金融公庫から融資を受け、自己資金を加えた約800万円で離れの車庫を改築。二間を客室として提供している。
お客さんに夕食をふるまっていると、ご近所さんも一杯やりに来て話に花が咲く。その輪の中、夫妻は会話に酔いしれる。慶祐さんは「こんな出会いが楽しい。民宿をやってなきゃ、絶対会えなかった人たちだからね」と話す。
(沢田歩)
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1泊2食付6500円。どぶろく「こぼれ雪」(720ml)は1300円。電話0880・46・2505
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この記事はテレビ朝日系「人生の楽園」と連動しています。東さん夫妻の回は、17日午後6時から放送予定です。
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