2017年3月1日水曜日

旅行会社、自治体に観光プラン 官民共同のDMOって?


 旅行会社が地方の観光政策の支援に力を入れている。自治体と一緒になって観光プランを作るなど、ノウハウを生かして地域の魅力をあげる取り組みだ。いい旅先が増えれば旅行者も増え、本業の売り上げ上昇にもつながるとそろばんをはじく。
 「海の京都」と呼ばれる地域がある。京都府北部にある舞鶴市福知山市などの7市町。大型客船が寄港する舞鶴港や天橋立などが有名だ。だが、地域全体では人口が減り、多くの人でにぎわう京都市に比べれば旅行者の動きは鈍い。
 そんな地域を売り込む手伝いをするのが旅行会社のJTB西日本だ。2015年度に京都府から1千万円、16年度は官民で作る観光推進組織「海の京都DMO」から4千万円で、支援事業を請け負った。独自調査で得た地域認知度などを元に、3月末までに計200の観光プランをつくる。
 地域住民の協力を得るプランも多い。例えば「漁師と行く洞窟見学ツアー」といった企画では、地元漁師に支払う手数料の交渉も担い、受け入れ態勢を整える。これらのプランで来年度以降、本格的に旅行者の増加につなげる考えだ。
 JTB西日本が15年度に自治体などから請け負った観光支援の事業の数は、13年度の1・7倍。関わる社員も今は約80人と同1・4倍だ。石村英之・観光開発プロデューサーは「旅行会社は旅行する人の目線で、旅行がしたくなる魅力を見つけるプロだ。観光支援では『目利き』も生かせる」と話す。
 ログイン前の続き旅行会社の取り組みが活発になった背景には、政府が成長戦略の柱として「観光立国の推進」を掲げたことがある。訪日外国人数を20年までに4千万人にする目標だ。地域の観光戦略の要となるDMOも増えた。DMOは、地域の「稼ぐ力」を引き出すことが求められており、旅行会社のノウハウに期待する自治体が多いというわけだ。
 海の京都DMOの梅田哲也・総合企画局長は「地域住民だけで旅行企画を考えるのは限界がある。地域外からの専門的な知識や視点が必要だった」と話す。
■地域支援、集客狙い
 JTB以外の旅行関連会社も、自治体向けの観光支援事業に力を入れている。
 旅行雑誌「じゃらん」などを作るリクルートライフスタイルが16年度から事業化した「コクリ!プロジェクト」は、地域の組織作りや人材育成が中心だ。
 例えば、熊本・黒川温泉では地域住民らの交流を図り、観光戦略を担う中核となる人材を育てる実証実験を進めてきた。こうしたノウハウを活用するという。費用は数百万円で、香川県琴平町など2自治体から仕事を引き受けた。他に複数の自治体からも引き合いがあるという。
 じゃらんリサーチセンターの沢登次彦センター長は「支援事業で大きな利益が出るものではないが、魅力的な旅先を増やし、旅行事業の売り上げ増につなげたい」と話す。
 訪日外国人向けツアーを企画する旅行会社フリープラスは昨年7月に地方創生本部を設立。訪日外国人を集客するための調査やPR支援を担う。凸版印刷がグループの旅行会社と昨年から始めた事業は、地域の組織作りから観光PRまでを「一括で引き受ける」と宣伝。高松市茨城県桜川市から仕事を引き受けている。(田幸香純)
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 〈DMO〉 観光地を売り込むための組織「Destination Management/Marketing Organization」の頭文字。官民で市場調査や戦略づくり、PRなどをする。観光庁には設立予定を含め、123法人が登録されている。