2014年8月27日水曜日

人ひと/原発のストレスから解放


写真:シェアハウスの前に立つ延藤好英さん=和気町衣笠拡大シェアハウスの前に立つ延藤好英さん=和気町衣笠
■母子避難シェアハウス世話人・延藤好英さん(57)
 2011年7月、東京電力福島第一原発事故の放射能を恐れて避難する母子のため、和気町に一時利用のシェアハウス「やすらぎの泉」を開設し、世話人を務めている。これまでに124組が利用した。繰り返し来た母子も多く、利用者が減る気配はない。
 「福島からの母子は2組だけで、あとはみな関東から。『ただちに影響はない』『許容範囲内』との宣伝文句への限りない不信が根っこにある。不安を抱える母親は影響がないと科学的に証明されるのを待つわけにはいかないのです。原発事故は立地県だけの問題ではありません」
 「(安倍晋三首相は)アンダーコントロールなんてよく言えたものですよ。現実を見たくなくてそんな言葉にすがりついているようにしか思えない」
 本業は日本基督(キリスト)教団和気教会の牧師。もともと教会の向かいにある空き家を借りて、様々な事情で家族から離れなくてはならない人のためのシェルターにしていた。原発事故の後、県内の避難者受け入れ団体「おいでんせぇ岡山」と連携し、4組の母子避難用のシェアハウスにした。
 12年に近所に別館(4組用)を開設。家の持ち主が引っ越しする際、趣旨に賛同して貸してくれた。昨秋には1家族用の3号館も開いた。利用料は光熱費、生活備品の利用料、トイレ処理費、町内会費を含め1カ月2万8千~4万円。軽自動車、自転車も備えてある。運営経費は利用料のほか、教会や東中国教区などの信者の献金、教団からの援助でまかなう。
 利用者のうち40組が和気町など近辺に移住した。近隣に移住した人は後に来る利用者にアドバイスをしたり、地域情報を教えたりするほか、「おかやま野菜倶楽部(くらぶ)」を立ち上げ、ハウス利用後に戻った家庭へ岡山の無・減農薬の季節野菜を届けている。
 「避難者を孤立させないことが何よりも大切。関東では避難者を『福島の人が避難していないのに』と責める目で見る傾向がある。ここは同じ危機感を持っている人たちに囲まれて、そのストレスから解放される場でもあります」
 教会の仕事も忙しい。備前市の三石教会と真庭市の久世、勝山両教会の牧師でもあり、県北にも説教に足を運ぶ。「これ以上手を広げるのは正直、無理」と苦笑しながらこう話す。
 「でも、やむにやまれぬ思いで来ている人たちがいることを知ってもらうのは、私の大事な使命だと思っています」(阿部治樹)
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■のぶとう・よしひで 1957年1月、和気町生まれ。和気閑谷高校卒業後、東京神学大学へ。1983年、卒業と同時に和気教会に着任した。93~99年に愛知県の愛知守山教会に赴任したが、2000年に再び地元へ戻った。ラーメン好きが高じて91~93年にJR和気駅前でラーメン店を営んだ経験もある。

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