2015年5月5日火曜日

生きる力を育む 脚光浴びる教育旅行(下)

2015年5月5日

 児童生徒が集団で訪れる教育旅行は、受け入れ先にとって魅力的な“顧客”。地域活性化にもつながり、全国で誘致活動が本格化している。
体験メニューや農村民泊をPRする全国各地のパンフレット。教育旅行の誘致合戦が本格化している
 全国修学旅行研究協会が2014年度に近畿地区の公立中学校約千校を対象に行った調査によると、訪問先の1位は関東、2位沖縄、3位九州、4位信州と続いた。
 同協会大阪事務局(大阪市浪速区)の瀧本厚志部長によると、旅行形態はかつての“物見遊山”から滞在・体験型に様変わり。特に関西では「農山漁村での民泊を通した地域住民との触れ合い、自然体験を取り入れたツアーが増えている」という。

■将来の観光客

 関西広域連合に加入する鳥取県も誘致に力を入れ始めた。県観光連盟は4月から、県関西本部(同市北区)に教育旅行誘致コーディネーターを配置。学校や旅行会社への売り込みに力を注ぐ。
 鳥取砂丘や大山、世界ジオパークに認定された山陰海岸など教育素材になる豊かな自然を誇るが、信州や九州に後れを取っている。同連盟の新貞二専務は「海と山が近い場所にあり、他県にない自然体験の提供が可能。教育旅行が増えれば産業や雇用創出など『地方創生』、将来の観光客獲得にもつながる」と期待を込める。
 同コーディネーターを務める磯江保さん(61)は、大手旅行会社で教育旅行を専門に営業をしてきた経験を持つ。5年前から観光プロモーターとして活動し、関西圏の学校や旅行会社を訪問し同県への教育旅行を実現させてきた。
 磯江さんは「旅行費用が高騰し、保護者や学校現場からは負担軽減を求める声が強い。行き先を近場に変更する動きもあり、鳥取県が選ばれる可能性は十分にある」と分析。訪問した学校の反応も良く、旅行会社からの問い合わせも増えるなど手応えをつかむ。

■地域資源を磨く

 教育旅行では、児童生徒たちの「安全安心」の確保が重要。緊急時の避難路、けが・事故対策などは一般のツアーより厳しく問われる。アレルギー食の対策や教育的効果、費用、アクセス、民泊の受け入れ能力など学校や旅行会社から求められる項目は多い。
 これらに対応するため、県は夏までに「教育旅行誘致協議会」を設立し、受け入れ側の態勢整備と意識の醸成を急ぐ。県観光戦略課は「教育旅行は鳥取の強みである自然や風土を生かせ、発展性のある分野」と位置付け、官民挙げて推進する考えだ。
 定着すれば、観光地としての魅力の底上げにもつながる。磯江さんは指摘する。「旅行業界では、教育旅行は旅行業務の基本。これにきちんと対応できれば、一般客の受け入れも進む。一つ一つの課題をクリアし、地域の魅力を磨き上げる」
 民泊 子どもたちが農山漁村の民家に宿泊し、各種体験や家族との交流、地域の食材や伝統、行事、風習に触れてコミュニケーション能力の向上、自主性や協調性を養う。全国修学旅行研究協会の2014年度調査では、関西の中学校のうち3割が修学旅行で民泊を取り入れた。信州や九州、沖縄で盛んで、大分県は民泊体験ができる施設を冊子で紹介するなど力を入れている。

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