- 「この時期は草刈りばかり」と慣れた手つきで機械を使う松瀬さん(京都市左京区久多)
「この時期は草刈りばっかりです」。3カ月の経験とは思えない。松瀬萌子さん(22)は慣れた手つきで機械を扱い、管理人を務める市民農園で駐車場の草刈りを始めた。
今年4月、京都府立大卒業と同時に京都市左京区久多に住み始めた。出身は佐賀県有田町。「田舎が嫌で京都に出てきたはずなんですが、また田舎に来てしまいました」。
久多は京都市中心部から車で1時間強。標高約400メートルの限界集落だ。人口80人超で高齢者が大半。集落にはスーパーはもちろん、コンビニもない。
高校生までは、都会にあこがれていた。関西の大学を選んだのも「都会」が理由だった。
しかし入学後、考えが変わった。野菜の旬、ゆずこしょうや竹籠の作り方など、故郷の母親の持っている知識や感覚は、都会では育めない。「地方の持っている豊かさに気付き、自分は何も受け継いでいないと思った」。「田舎」が、自らのテーマになった。
大学生活も後半を迎え、周囲と同様に就職活動もしたが、ある時「自分がストップしてしまった」。企業に向いていないと思い、受けるのを辞めた。
同じ頃、「村留学」というイベントに参加し、久多を訪れた。温かい人々、光るせせらぎ、連綿と残る伝統行事。「全てが美しく感じた」。イベント運営団体の代表者に「久多に住みたいか」と聞かれ、「住みます」と答えていた。
以降、何度も久多に通った。「どうやって春から暮らすか」を念頭に卒業論文も久多をテーマに執筆した。
家は10年ほど空き家だったものを、所有者の隣家の男性が貸してくれた。仕事は住民らのあっせんで花背と久多3カ所にある市民農園の管理人を務めることになった。
広い家で一人、寂しさを感じることもある。「独り暮らしのお年寄りも同じなんですよね」。にぎわい創出に決意をのぞかせる。
新卒で久多に住むなんて珍しいと言われるのが、納得いかない。「風変わり」ではなく、久多に引かれて住んでいるから。「もっと久多のことを知り、久多を訪れる若者を増やしたい」と願う。
「田舎に興味ある人はもっといるはず。私がスタートラインになって、久多に住むという選択肢もあるんだと知ってもらいたい」
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