2010年6月22日火曜日

京都・京丹後市の梅本修さん(46) 有機野菜 土づくりにこだわる

日本農業新聞2010年06月22日

 京都府京丹後市の梅本修さん(46)は、3.6ヘクタールで40品目の野菜を有機栽培する。慣行農法で葉タバコやダイコンなどの露地野菜を9ヘクタールまで規模拡大した経営を7年かけて有機農法に切り替えた。連作障害や病害虫被害を抑える輪作や混植といった手法を駆使し、安定生産する。有機野菜の地元流通を増やす活動にも力を入れる。

 梅本さんは1997年にサラリーマンを辞め、国営農地のある同市(旧弥栄町)に新規就農した。就農時は3ヘクタールでスタートし、2003年には9ヘクタール(葉タバコ3.5ヘクタール、ダイコン2ヘクタール、サツマイモ1ヘクタールなど)まで拡大。パート従業員は常時10人を抱え、粗収益は目標だった2200万円を達成した。

 転機を迎えたのは消費の現場を探ろうと、03年冬に学校や病院に給食を提供する給食センターを訪問したのがきっかけ。同センターの食材の大半が外国産だった。梅本さんは、将来を担う子どもたちや、体を治すための病院患者に外国産農産物が大量に利用されていることに驚き、同時に自らの農法に疑問を抱くようになった。

 「食べる人の気持ちを考えた農業とは、生き物をはぐくむ有機農業ではないか」と考え、経営方針を切り替えた。「サラリーマンを辞めて就農した時よりも、有機農業に切り替えるほうが不安いっぱいで一大決心だった」と当時を振り返る。

 有機農法の知識を学ぶため、大学の研究者や有機農業に取り組む農家との交流を深め、技術向上を図り、販路を広げていった。

 栽培のこだわりは土づくり。牛ふんや豚ぷんなどの畜ふんは使わない。害虫が発生しやすくなると考えるためだ。植物由来の堆肥(たいひ)を確保するため、地域の河川敷で廃棄物となる雑草を買い取り、堆肥として活用する。「土の中の微生物が野菜を育てる」と考える。紫外線が苦手な微生物が常に活性化する環境を整えるため、圃場(ほじょう)にもみ殻や落ち葉などをまいている。

 経営作物も切り替えた。6品目だった作物は現在40品目に。しかし、9ヘクタールだった経営面積は半分以下の3.6ヘクタールに。このうち07年に1.2ヘクタールで有機認証を取得。09年には2ヘクタールまで広げた。残りは認証を受けていないが、認証圃場と同様に栽培する。

 スーパーや漬物業者などとの契約も取りやめ、09年の粗収益は1400万円とピーク時の4割減となった。しかし梅本さんは「収益増も大切だが、薬(農薬)とサプリメント(化学肥料)に頼る農業よりも、自然と共生する有機農業が魅力的だ」と強調する。

 有機農産物の大半は、市外の有機農産物を専門に扱う小売店や生協などと取引する。地元流通は全体の15%にとどまる。このため地元流通を増やそうと今年から、地元の消費者に詰め合わせを宅配する活動や、学校給食への提供に乗り出す予定だ。「足元から有機農産物のファンを増やしたい」と意欲的だ。

〈ポイント〉
[1]作物増やし40品目に [2]安定生産へ輪作・混植 [3]地場流通の拡大に挑戦

〈経営概況〉
 労働力=修さんと妻、研修生1人、農繁期にパート従業員が5人。

 粗収益=約1400万円。

 京都府北部にある。農業は稲作と梨が盛ん。梨は「ゴールド二十世紀」のうち糖度が11.5以上のものを「京たんご梨」に認定している。