2013年4月25日木曜日

ハンター民宿の「ババア」28歳 鳥取の梅ちゃん奮闘中

写真・図版

「ハンター民宿BA-BAR」を営む梅野知子さん=鳥取市河原町弓河内
 鳥取市河原町弓河内に、20代女子が営む民宿がある。その名も、「ハンター民宿BA-BAR(ババア)」。若い女性が、ハンターのババア?どんな民宿なのだろう。
 「バーのような憩いの場にしたいという思いを込めて、あえてババアという名前にしました」
 そう話すのが、宿主の梅野知子さん(28)だ。身長152センチと小柄で、まっすぐな黒髪と大きな瞳が印象的。だが、わな猟の狩猟免許と、県の鳥獣技術士資格「イノシッ士」を持つ、正真正銘のハンターだ。狩りに出るときは、真っ赤なつなぎの作業服に、「大日本猟友会」のオレンジ色のベストとキャップをかぶって山に入る。
 イノシシやシカを狙ってわなを仕掛けるが、「腕はまだまだ未熟。先輩と狩りに出て、夜は一緒にお酒を飲みながら、狩りの技術や肉のおいしい食べ方を教わっています」と梅野さん。先輩から教わったハンターの心得は、「狩りをするときは動物の行動をイメージすること。さばくときは骨の構造を覚えること」という。
 民宿では、野生の鳥獣肉を使ったジビエ料理を客と一緒に作って食べる。完全予約制で、基本は1泊2食付き7500円。仕掛けたわなを客と一緒に見回るが、事前に捕って保存しておいたジビエを使うことがほとんどだ。イノシシ肉を使うことが多く、おすすめは、モモ肉のから揚げとすき焼き風鍋。味は豚肉よりも淡泊で、脂身もさっぱりしている。血抜きをしっかりすれば臭みもない。
 空き家になっていた民家を借り受け、2012年10月に民宿をオープン。これまでに11組の客が訪れ、リピーターもいるという。梅野さんは、「旅館のように客をもてなすのではなく、親戚のように一緒に料理して過ごす。民泊に近い」と話す。予約が入ると野菜をくれるなど、集落の人たちも応援してくれているという。
 福岡市で生まれ育ち、幼い頃から動物が好きだった。鹿児島大学農学部で畜産を専攻。野生動物の保護に関心があったが、次第に「人の視点にたって動物と関わりたい」と思うようになった。
 狩りとの出会いは大学4年の5月。北海道で狩猟セミナーに参加し、エゾシカを撃つハンターに「かっこいい!」と魅了された。「捕った獲物をみんなで食べるのが楽しくて、しかも人の暮らしの役に立つ。このとき、ジビエ料理をみんなで食べる空間をいつか作りたいと思った」。この年の8月、狩猟免許を取った。
 大学院修了後の10年春、地域と学生をつなぐ活動をするNPO法人「学生人材バンク」の職員として鳥取県へ。田中玄洋代表理事から「やったれ」と背中を押され、民宿を立ち上げた。NPO職員として働く傍ら、民宿を営む。
 「鳥獣害の被害が増えている背景には、ハンターの担い手不足がある」と梅野さん。ハンターで食べていける仕組みを作ることが夢だという。「若いハンターが増えるように、この地で広めていきたい」
■「料理は勉強中」
 大きな声でハキハキ話すパワフルな梅野さんを、先輩ハンターは「梅ちゃん」と呼ぶそうです。「料理はあまり得意じゃないけど、勉強中です」と言い、レシピ作りでは近所の人や先輩のアドバイスも参考にしているとのこと。台所には、調味料の瓶がたくさん並んでいました。
 いろんな人の力を借りながら、周囲を巻き込んでいく「梅ちゃん」が、地域を元気づけているようです。(村井七緒子)

朝日新聞2013年04月25日02時59分