ドローン(無人航空機)を使って、過疎地域とされる「ふるさと」の観光資源を上空から探そう――。四日市大学などによる調査が、三重県いなべ市藤原町の鼎(かなえ)地区であった。さて、空から見たふるさとの姿は?
 鼎は約50戸、住民約120人、小学生は5人と市内で最も過疎化が進む地区の一つ。「調査と聞いた時はプライバシー侵害などを心配した」と自治会長の伊藤憲朗さん(62)は打ち明ける。でも、実際に空からの映像を見て感激した。「地上の景色がきれいで驚いた。ふるさとも捨てたもんじゃないなと」
 豊かな自然を生かす「グリーンツーリズム」で過疎地を元気にしようとする市などの調査の一環で、四日市大の研究者らが9日、実施した。担ったのは、同大環境情報学部の千葉賢教授(59)、同大自然環境教育研究会監事で歴史文化研究家の長谷川博久さん(66)とドローンに詳しい総合地球環境学研究所(京都)の渡辺一生さん(37)。
 ログイン前の続き藤原岳を西に望む野山の中腹の採石場や三重用水の中里ダム、梅林公園の3カ所でドローンを飛ばし、撮影した。ダム湖に顔を出すかつての山々の頂は空から見ると、まるでリアス式海岸のように美しい。
 採石場の調査地には、昨年の地元調査で四日市大の学生が住み込みの世話になった西脇敬三さん(67)、かづゑさん(70)夫妻と、孫の昇汰朗君(11)、侑里さん(9)もやってきた。西脇さんは初めて見る本格的なドローンにびっくりしながら、「若い人が来てくれることはうれしいです」と調査に期待する。
 いなべ市は、藤原町の鼎、篠立、古田と北勢町の川原、二之瀬の計5地区をグリーンツーリズムの対象とする。いずれも岐阜や滋賀との県境。京都産業大学も協力し、調査自体は2019年度まで続くが、並行して、新年度からは各地区の観光資源を生かす取り組みに入りたいという。
 伊藤さんは、地元の観光資源として「鼎塚(かなえづか)」に期待する。1600(慶長5)年の関ケ原の戦いで、西軍の島津義弘軍が敵中突破を図って郷里の薩摩まで逃げ延びた有名な逸話がある。その途中で鼎地区を通り、この地で命運尽きた家来を弔った塚だ。
 文化や歴史に詳しい長谷川さんも「最終的には郷里へ帰る夢をかなえた途中の地で、まだ広くは知られていない塚。観光資源として申し分ない」と話す。
 ドローン調査を発案した千葉教授には、観光資源を探す目的だけでなく、もう一つの思いがあった。「新しい角度でふるさとを見てもらうことで、過疎で自信を失いがちな人たちに元気になってほしいんです」(中根勉)