2015年4月17日金曜日

学校統廃合:山村留学で地域の核…かつて「人口最少の村」




富山小中学校(奥)が閉校し、春から浜松市天竜区の学校に越境通学している安井恵里花さん(左)と弟の豪君。「友だちみんなで同じ学校に行きたかった」と言った=愛知県豊根村の富山地区で2015年3月25日午前9時42分、町田結子撮影
富山小中学校(奥)が閉校し、春から浜松市天竜区の学校に越境通学している安井恵里花さん(左)と弟の豪君。「友だちみんなで同じ学校に行きたかった」と言った=愛知県豊根村の富山地区で2015年3月25日午前9時42分、町田結子撮影


 かつて「日本一人口が少ない村」だった愛知県豊根村富山(とみやま)地区(旧富山村)で今春、地区唯一の学校が閉校した。都市部の小中学生が親元を離れて学ぶ「山村留学」でも知られたが、人口減少の流れには勝てなかった。「学校は地域の核だった」。住民は不安を募らせる。

 ◇愛知・豊根村の富山地区

 「友達の数は少なくても、すごく仲良くなれた。もっと一緒にいたかった」。閉校まであと数日と迫っていた3月末、地元で育ち、村立富山小中学校に通っていた安井恵里花さん(12)が通学路の階段でつぶやいた。
 同校は、山村留学を県内で唯一受け入れた小中一貫校。2014年度の児童・生徒数は小3〜中3の計18人。地元の子は7人で、11人が留学生だった。
 山村留学は旧富山村時代の1985年に始まり、10年間の休止を経て、05年から地元住民らで作るNPO法人が事業を担当した。この間、全国各地の140人以上が寮生活を送りながら学び、育った。指導員として採用された若者も村外から移住し、消防団などに参加して地域を支えた。NPO元理事長で、豊根村議の山下喜代治さん(63)は「山村留学が地域を活性化させた」。
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 旧富山村が隣の豊根村に編入統合されたのは05年。これといった産業もない人口215人(当時)の村が、財政破綻を避けるための選択だった。「学校を残す」が合併条件の一つ。だが、子どもは減り、13年度には留学生が多数になった。数年後には地元の子がゼロになると言われた。
 豊根村は山村留学に年間1000万円を補助。財政が厳しさを増す中、村は2年前、富山小中学校を豊根小学校と豊根中学校へ編入統合することを決めた。
 今年2月の村長選。伊藤実村長(64)に対し、前村議が閉校の白紙化を求めて立候補した。しかし、伊藤村長が2倍以上の得票で再選した。
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 閉校後、富山小中学校に食材を納入していた地区唯一の商店が廃業し、60代の店主夫婦は村を出た。地元の子ども7人のうち、3人が豊根小中学校に移り、山道をバスで片道1時間かけて通う。安井さんと弟の豪君(9)ら残る4人は、隣接の浜松市天竜区にある小中学校への越境通学を選んだ。山村留学の子ども全員と、一部の指導員も村を去った。富山地区の人口は3月末現在で99人と、1年前より14人減った。

校舎の跡地利用は未定。21日には村議選が告示され、富山地区から1人が出馬予定だが、閉校問題は争点になりそうもない。「地域との関わりが特に強い学校だった。普通の閉校以上の閉塞(へいそく)感が漂うかもしれない」。住民の男性(63)が漏らした。【町田結子】

 ◇学校の統廃合◇

 文部科学省によると、過去10年の平均で年間、約500の小中高校が廃校。人口減少が要因で、同省は今年1月、約60年ぶりに公立小中学校の統廃合基準を見直し、「1学年1学級以下」の学校には早急な統廃合の検討を促した。廃校は地域の衰退を加速させる恐れもあり、「他校との合同授業」など、存続の場合の対応策も示した。