2013年1月19日土曜日

有害鳥獣で地域振興 エコツーリズム+革製品 NPO法人2団体連携

 野生動物の皮を製品化する組織と農村へのエコツーリズムを仕掛けてきた団体が18日、イノシシや鹿の革製品を地域振興に結び付けるプロジェクトチームを結成した。農作物への被害をもたらす有害鳥獣の皮を普及する仕組みをつくり、狩猟者のやりがいを生み出し、地域を活性化する考えだ。同日開いた初会合で、チームが団結して消費者に、狩猟者や農家の思いを伝える懸け橋となることを誓った。

・消費者巻き込め 資源化し農村元気に

 野生動物の皮を製品化するのは、特定非営利活動法人(NPO法人)「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」。獣害対策で駆除した鹿やイノシシの皮をなめして地域に戻し、製品化する活動支援をしている。

 チームを組んだのは、農村へのエコツーリズムを進めるNPO法人「日本エコツーリズムセンター」。4年前からツーリズム普及の一環として、現場で深刻な問題となっている鳥獣害の実態を都市住民に伝えたり、野生の鳥獣肉(ジビエ)を使った料理を普及したりする活動に力を入れている。

 同センターは昨年、鳥獣害対策の活動の中で「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」副代表で、東京都内で皮なめし業を営む山口明宏さん(45)と知り合い、意気投合。異業種で活動してきた組織同士がタッグを組み、担い手不足などの狩猟の問題を共有し、皮の製品化が農山村のビジネスに結び付けられないか、互いに知恵を出し合っていくことを決めた。

 初会合では、山口さんが「野生動物の皮は肉片や脂がついていてなめす作業が難しい。現場の農家や狩猟者に革製品を見てもらって、正しい皮のはぎ取り方の講習会ができないか」などと問題を提起。プロジェクトチームの活動第一弾として、技術講習会を農村各地で開くことが決まった。

 同センターの鹿熊勤さん(56)は「野生動物の革製品は、野山を走り回ったり捕獲したりする段階でできた傷を生かすことが大切だ。不特定多数の消費者ではなく、傷の良さをわかってくれる特定層に販売する仕組みが必要」と強調。子どもや都市住民を対象にした革加工の体験講習会や、ツアーの企画を進めていくことにした。

 プロジェクトチームでは今後、産地の声を聞きながら、農山村で“厄介もの”とされているイノシシや鹿が地域資源となるよう、活動を重ねていく。

 同センター代表の広瀬敏通さん(62)は「鳥獣害が地域を疲弊させている。プロジェクトで鳥獣害の現場と皮加工、販売を顔の見える関係にして、野生動物の革製品を産業化させることが、農家の元気につながる」と力を込める。

(日本農業新聞2013年01月19日)