2013年9月10日火曜日

民泊に「お墨付き」 徳島の9軒、農林漁家民宿に

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農林漁家民宿の開業を機に手作りの「柿の宿」の看板をかける大柿兼司さん(右)夫婦=三好市井川町
 【福家司】県西部で修学旅行生の民泊を受け入れてきた家庭のうち9軒が今夏、「とくしま農林漁家民宿」となった。修学旅行生の誘致競争に有利となる上、一般の宿泊客を受け入れることもできるとして、県西部で修学旅行の受け入れ窓口となっている一般社団法人「そらの郷」が営業許可取得を勧めてきた。
 そらの郷によると、新たに取得したのは三好市の5軒、東みよし町の3軒、つるぎ町の1軒。いずれも野菜の収穫や家畜の世話、森林の間伐などの農林業体験ができる。これまで、県西部の農林漁家民宿は同市の4軒だった。
 修学旅行生の民泊は、県の方針によって、営業許可を得ていない家庭にも特例的に認められている。しかし、全国的に誘致合戦が激しくなり、地域によっては民泊家庭の多くが農林漁家民宿の営業許可を得ていることをセールスポイントとするところもあるという。
 そらの郷の得田多佳志事務局次長は「旅行会社や学校側の信頼が増す。現在の民泊家庭のうち農林漁業者がすべて許可を得ることを目標に、今後もマニュアル作成などで取得を支援していきたい」と話す。修学旅行生だけでなく、企業の研修などの一般の宿泊客の受け入れも可能になるという。得田さんは「たとえば修学旅行生が大人になって、子どもなど家族連れで再び泊まりに来ることもできるようになる」と語る。
 今回取得した「柿の宿」(同市井川町)は、そらの郷理事長も務める西井川林業クラブ会長の大柿兼司さん(64)の自宅だ。同クラブでは5軒の家庭が2006年度から修学旅行生計417人を受け入れ、林業、木工体験などを提供。大柿さんは「柿の宿の定員は4人と少ないが、修学旅行生や一般宿泊客の受け入れにメリットがあると考えて、率先して取得した。ほかの家庭にも勧めたい」と話している。
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 〈とくしま農林漁家民宿〉 国の規制緩和により、03年度から都道府県の許可により旅館業法に基づく簡易宿所よりも容易に開業できる「農林漁家民宿」が制度化された。農林漁業者の家庭に限り、宿泊者が農林漁業を体験できることが条件。規模は客室延べ面積33平方メートル以下、定員10人未満で、食事は家族と宿泊者の共同調理。県によると12年度末現在、県内には三好市上勝町各4カ所、吉野川市3カ所、牟岐町2カ所、美波、那賀川、勝浦各町各1カ所の計16カ所ある。

http://digital.asahi.com/area/tokushima/articles/OSK201309090116.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_OSK201309090116

2013年7月2日火曜日

大麻栽培、町おこしの種 鳥取・智頭、Iターン農家挑む

朝日新聞デジタル版(2013年7月2日)

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大麻栽培者免許を取得した上野俊彦さん。畑では大麻草がすくすく成長していた=鳥取県智頭町八河谷
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畑でぐんぐん伸びる大麻草=鳥取県智頭町八河谷
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鳥取県智頭町の地図

 【村井七緒子】鳥取県智頭町の山あいで、大麻草がすくすく育っている。免許を得て栽培に取り組むのはIターン農家。幻覚成分をほとんど含まない品種で、神事に使うほか、日用品や食品への加工もめざす。町は、免許取得を全面的に支援。新たな町おこしに期待をかけている。
 智頭町八河谷(やこうだに)の農家、上野俊彦さん(33)。東日本大震災をきっかけに、昨春、群馬県から家族で、受け入れの盛んな智頭町に移住した。同集落は人口約40人。高齢化率は5割を超える。
 長老から「昔はここで麻を育てていた」と聞いた上野さん。免許を得て大麻を栽培する農業法人で、以前働いていたことを長老に打ち明けると、「ここでやればいい。わしにできることは何でもやるけ」と背中を押された。
 大麻は古くから日本各地で栽培され、茎からとれる繊維をしめ縄や草履、蚊帳などの日用品に使い、種子を食料にしてきた。だが、大麻取締法で栽培が都道府県の免許制となり、伝統的祭事に不可欠な場合などに限られること、化学繊維が増えたことなどで栽培面積は激減した。
 厚生労働省によると、1963年に全国で8625人いた大麻草の栽培者は、2011年には50人となり、栽培面積も932ヘクタールから北関東滋賀県などの約5ヘクタールに減った。鳥取県でも03年以降、栽培者が途絶えていた。
 育てるにはまず栽培者免許の申請が必要だ。「1人で行っても門前払いされるのではないか」と思った上野さんは今年3月、町に相談した。熱心な説明を聞いた山村再生課の国岡秀憲さん(35)は「ぜひやりましょう」。町のイメージが悪くなる懸念もあったが、町では、地域資源を再発見して暮らしを守る取り組みをしており、「地域活性化につながるなら、やってみようと思った」と国岡さん。寺谷誠一郎町長も「おもしろい」と支援を約束した。
 準備は入念に進めた。町には、平安時代の歴史書「日本三代実録」にも登場する神社がある。神事用に今は中国製の繊維を使っているが、神社側は「収穫した麻をしめ縄などに使いたい」と言ってくれた。
 また、かつて栽培していた高齢者に取材。大きな釜で茎を蒸して繊維を取っていた様子や、丈夫な麻には多様な用途があったことなどを語ってもらい、映像に収めた。
 町を挙げての申請を受け、県は2度の協議の末、4月末に免許を交付。品種は幻覚を引き起こす成分をほとんど含まない「とちぎしろ」に限ること、盗難防止に畑の周囲に柵や監視カメラを設置することなどを条件とした。県医療指導課の担当者は、「地元の後押しもあり、神事での伝統の復元など社会的有用性が認められた」と理由を話す。
 上野さんは「町の職員が話を聞いてくれ、ありがたかった。産業として育て、活性化や雇用に貢献したい」と意気込む。今年は約2300平方メートルの畑で主に種子を収穫し、本格的に繊維が取れるのは来年から。実はみそやヨーグルトに混ぜた食品として、繊維は和紙の原料などとしても活用したいという。
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 〈大麻〉 1年草で2~3メートルに育つ。葉や花に幻覚成分が含まれるが、繊維をとる茎や、食料にする種子には含まれない。乱用防止を目的に1948年に制定された大麻取締法では、免許を受けた栽培者と研究者を除き、所持や栽培、譲渡などを禁止している。日本での栽培は、縄文時代に始まったとも言われる。神事と縁が深く、伊勢神宮三重県)のお札は今も「神宮大麻」と呼ばれる。戦前から代表的産地だった栃木県が83年に開発した「とちぎしろ」は「無毒大麻」とも呼ばれるが、これも法規制の対象。

2013年4月25日木曜日

ハンター民宿の「ババア」28歳 鳥取の梅ちゃん奮闘中

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「ハンター民宿BA-BAR」を営む梅野知子さん=鳥取市河原町弓河内
 鳥取市河原町弓河内に、20代女子が営む民宿がある。その名も、「ハンター民宿BA-BAR(ババア)」。若い女性が、ハンターのババア?どんな民宿なのだろう。
 「バーのような憩いの場にしたいという思いを込めて、あえてババアという名前にしました」
 そう話すのが、宿主の梅野知子さん(28)だ。身長152センチと小柄で、まっすぐな黒髪と大きな瞳が印象的。だが、わな猟の狩猟免許と、県の鳥獣技術士資格「イノシッ士」を持つ、正真正銘のハンターだ。狩りに出るときは、真っ赤なつなぎの作業服に、「大日本猟友会」のオレンジ色のベストとキャップをかぶって山に入る。
 イノシシやシカを狙ってわなを仕掛けるが、「腕はまだまだ未熟。先輩と狩りに出て、夜は一緒にお酒を飲みながら、狩りの技術や肉のおいしい食べ方を教わっています」と梅野さん。先輩から教わったハンターの心得は、「狩りをするときは動物の行動をイメージすること。さばくときは骨の構造を覚えること」という。
 民宿では、野生の鳥獣肉を使ったジビエ料理を客と一緒に作って食べる。完全予約制で、基本は1泊2食付き7500円。仕掛けたわなを客と一緒に見回るが、事前に捕って保存しておいたジビエを使うことがほとんどだ。イノシシ肉を使うことが多く、おすすめは、モモ肉のから揚げとすき焼き風鍋。味は豚肉よりも淡泊で、脂身もさっぱりしている。血抜きをしっかりすれば臭みもない。
 空き家になっていた民家を借り受け、2012年10月に民宿をオープン。これまでに11組の客が訪れ、リピーターもいるという。梅野さんは、「旅館のように客をもてなすのではなく、親戚のように一緒に料理して過ごす。民泊に近い」と話す。予約が入ると野菜をくれるなど、集落の人たちも応援してくれているという。
 福岡市で生まれ育ち、幼い頃から動物が好きだった。鹿児島大学農学部で畜産を専攻。野生動物の保護に関心があったが、次第に「人の視点にたって動物と関わりたい」と思うようになった。
 狩りとの出会いは大学4年の5月。北海道で狩猟セミナーに参加し、エゾシカを撃つハンターに「かっこいい!」と魅了された。「捕った獲物をみんなで食べるのが楽しくて、しかも人の暮らしの役に立つ。このとき、ジビエ料理をみんなで食べる空間をいつか作りたいと思った」。この年の8月、狩猟免許を取った。
 大学院修了後の10年春、地域と学生をつなぐ活動をするNPO法人「学生人材バンク」の職員として鳥取県へ。田中玄洋代表理事から「やったれ」と背中を押され、民宿を立ち上げた。NPO職員として働く傍ら、民宿を営む。
 「鳥獣害の被害が増えている背景には、ハンターの担い手不足がある」と梅野さん。ハンターで食べていける仕組みを作ることが夢だという。「若いハンターが増えるように、この地で広めていきたい」
■「料理は勉強中」
 大きな声でハキハキ話すパワフルな梅野さんを、先輩ハンターは「梅ちゃん」と呼ぶそうです。「料理はあまり得意じゃないけど、勉強中です」と言い、レシピ作りでは近所の人や先輩のアドバイスも参考にしているとのこと。台所には、調味料の瓶がたくさん並んでいました。
 いろんな人の力を借りながら、周囲を巻き込んでいく「梅ちゃん」が、地域を元気づけているようです。(村井七緒子)

朝日新聞2013年04月25日02時59分

2013年1月19日土曜日

有害鳥獣で地域振興 エコツーリズム+革製品 NPO法人2団体連携

 野生動物の皮を製品化する組織と農村へのエコツーリズムを仕掛けてきた団体が18日、イノシシや鹿の革製品を地域振興に結び付けるプロジェクトチームを結成した。農作物への被害をもたらす有害鳥獣の皮を普及する仕組みをつくり、狩猟者のやりがいを生み出し、地域を活性化する考えだ。同日開いた初会合で、チームが団結して消費者に、狩猟者や農家の思いを伝える懸け橋となることを誓った。

・消費者巻き込め 資源化し農村元気に

 野生動物の皮を製品化するのは、特定非営利活動法人(NPO法人)「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」。獣害対策で駆除した鹿やイノシシの皮をなめして地域に戻し、製品化する活動支援をしている。

 チームを組んだのは、農村へのエコツーリズムを進めるNPO法人「日本エコツーリズムセンター」。4年前からツーリズム普及の一環として、現場で深刻な問題となっている鳥獣害の実態を都市住民に伝えたり、野生の鳥獣肉(ジビエ)を使った料理を普及したりする活動に力を入れている。

 同センターは昨年、鳥獣害対策の活動の中で「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」副代表で、東京都内で皮なめし業を営む山口明宏さん(45)と知り合い、意気投合。異業種で活動してきた組織同士がタッグを組み、担い手不足などの狩猟の問題を共有し、皮の製品化が農山村のビジネスに結び付けられないか、互いに知恵を出し合っていくことを決めた。

 初会合では、山口さんが「野生動物の皮は肉片や脂がついていてなめす作業が難しい。現場の農家や狩猟者に革製品を見てもらって、正しい皮のはぎ取り方の講習会ができないか」などと問題を提起。プロジェクトチームの活動第一弾として、技術講習会を農村各地で開くことが決まった。

 同センターの鹿熊勤さん(56)は「野生動物の革製品は、野山を走り回ったり捕獲したりする段階でできた傷を生かすことが大切だ。不特定多数の消費者ではなく、傷の良さをわかってくれる特定層に販売する仕組みが必要」と強調。子どもや都市住民を対象にした革加工の体験講習会や、ツアーの企画を進めていくことにした。

 プロジェクトチームでは今後、産地の声を聞きながら、農山村で“厄介もの”とされているイノシシや鹿が地域資源となるよう、活動を重ねていく。

 同センター代表の広瀬敏通さん(62)は「鳥獣害が地域を疲弊させている。プロジェクトで鳥獣害の現場と皮加工、販売を顔の見える関係にして、野生動物の革製品を産業化させることが、農家の元気につながる」と力を込める。

(日本農業新聞2013年01月19日)