2012年12月27日木曜日

〈人生の楽園〉農家民宿=鹿児島県薩摩川内市

写真・図版

「ログハウスって人類の原点の家という感じがする」という濱田恭平さんと、伊津子さん=鹿児島県薩摩川内市
写真・図版
鹿児島県薩摩川内市
■丸太の家、夫婦で開墾 濱田恭平さん(68)、伊津子さん(67)
 アルプスの少女ハイジになったみたい――そんな気分を味わえるのが濱田恭平さん、伊津子さん夫妻が鹿児島県薩摩川内(せんだい)市で経営するログハウスの「ファームロッジ濱田」だ。丸太は直径30センチ以上もあるカナダ産の赤杉、煙突つきのストーブ、山小屋風のとんがり屋根の天窓からは、きらめく星空を見られる。
 恭平さんは薩摩川内の出身。「出身地に戻り、ログハウスで自給自足的な生活を楽しみたい」というのが、千葉でサラリーマン生活をしていたころからの夢だった。きっかけは折り込みのログハウスのチラシだった。展示場などで見て回った物件は20軒近く。専門誌で建築費やデザインなどを研究した。
 ログハウスでの暮らしに備え、千葉時代も畑を借り、野菜を栽培した。学生時代には狩猟免許も取っていた。しかし、不況で会社の経営が厳しくなり、ストレスで1年ほど病気を患い、58歳で退職。「自殺を考えるほどつらかったが、乗り越えれば大きな夢がかなうよと妻に励まされた」と恭平さん。
 ハウスの建築費は約5千万円、約67アールの土地代は約500万円。退職金と貯金をあて、残りの1500万円はローンを組んだ。テーブルやいすは丸太の残りで作ったものだ。「木立の中で暮らしているみたい。でも夏は涼しく、冬は暖かいんですよ」と伊津子さんは満足げ。
 購入した土地は荒廃していたが、チェーンソーで木を切り、草を刈り、夫婦で1年がかりで開墾して畑にした。昨夏に農家民宿をオープンした。
 今は畑にハクサイやキャベツ、ポンカンなど、約40種類の野菜や果物が育つ。自家製の野菜や、狩猟したカモやイノシシなど野生鳥獣の肉を使ったジビエ料理を客にふるまう。川内川でアユやウナギを釣ることも。
 将来は、ピザ窯や露天風呂も作りたい、と夫妻の夢は続く。
(文と写真・山根由起子)
    ◇
■宿 薩摩川内市東郷町斧渕1033(電話0996・42・1201)。鹿児島空港からシャトルバスで川内駅まで約75分。博多駅からは九州新幹線「さくら」で最速1時間11分。川内駅からの車の送迎有。約15分。1泊2食6500円、4歳~小学生は4千円。客室は2部屋。
■家族 恭平さんと伊津子さんはお見合いで結婚。3男に恵まれた。現在は2人暮らし。10羽の鶏、2匹の犬、1匹のイノシシもいる。
■農業体験 蒸しパン作り、ソバや小麦の植え付けと収穫、魚釣り、サツマイモ掘り、ミカン狩り、ブルーベリー収穫など。
■満足度 会社員時代は60点、現在は90点。

朝日新聞 2012年12月27日10時15分

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